“19歳から24歳”に制作したシングルを集めた『シングルコレクション19-24』

2014年09月10日

 デビュー5周年のアニバーサリーイヤーを迎えた阿部真央。8月20日にリリースされた『シングルコレクション19-24』はタイトル通り、19歳から24歳までの間にリリースされたシングル曲をコンパイルした作品集だ。このアルバムの内容を紹介しながら、デビューからの5年間を紐解いてみたいと思う。

19歳のときにリリースされたシングルは「伝えたいこと/I wanna see you」「貴方の恋人になりたいのです」「いつの日も」の計4曲。筆者はデビュー当初から彼女にインタビューする機会を得ていたのだが、当時の印象を端的に言うと“危ういほどに率直”ということになるだろうか。取材の場でも物怖じすることなく、自分の感情、考えていることをはっきりと言葉にしようとする彼女の姿勢は、楽曲のなかにもしっかりと投影されていた。それがもっともストレートに表出しているのは、やはりラブソングだろう。たとえば「貴方の恋人になりたいのです」。好きな人に送ったメールの返事が来ず、「送らなければ良かったな」と後悔しながらも、“もっと貴方のことを知りたい”“恋人になりたい”と切実に願う――こんなにも真っ直ぐで切ないラブソングは、本当に稀だと思う。また、10代特有の性急さ、瑞々しさに溢れたボーカルも印象的だ。

20代になってから発表された「ロンリー」「19歳の唄」「モットー。/光」「側にいて」を聴くと、アーティストとしてのキャリアを重ねるにつれて、その作風が大きく広がっていくのが分かるだろう。ドラマティックかつポップなメロディラインのなかで、“独りでいることの寂しさ”を描き出す「ロンリー」、攻撃的なバンドサウンドとともに「見失ってる僕を 壊して」と叫ぶ「19歳の唄」(この曲には阿部真央のロックな側面が強く表れている)、自分をごまかさず、もがきながらも歌い付けようとする決意を改め示した「モットー。」、震災の後に書かれ、「必ず 迎えに行くから 待っていて」という祈りを捧げるバラードナンバー「光」、そして、哀切な旋律とクラシカルなアレンジ、“終わってしまった恋”をテーマにした歌がひとつになった「側にいて」。歌詞の内容、メロディの豊かさが増し、シンガーソングライターとして確実にレベルアップしたこの時期の楽曲によって彼女は、アーティストしての存在感をしっかりと確立させた。



一方で20歳前後は阿部真央にとって、大きな壁にぶつかった時期でもあった。その理由は喉の不調(21歳になった2011年1月に手術を受け、療養に入った)。感情とボーカルをダイレクトに結び付けようとする彼女にとって、“思うように歌えない”という状況は本当に辛かったと思う。実際、この時期は精神的にも不安定で、インタビューの場で「アーティストやるのって、大変だよ」と弱音を吐くこともあった。 
このシリアスな時期を抜けるきっかけになったのは、’12年5月にリリースされた「世界はまだ君を知らない」。この曲が収録されたアルバム『戦いは終わらない』からセルフプロデュースに移行し、アレンジやレコーディングに関して、さらに深く関わるようになったのだ。彼女自身は「セルフプロデュースを始めた頃は、どうしても気負い過ぎてた部分があった」という趣旨の発言をしているが、自分の楽曲を客観的に見つめ直し、表現方法を精査していく作業は、彼女にとっても貴重な経験となったはず。そして、その効果がさらに良い形で表れたのが、「最後の私」だろう。「報われるはずなどなかった片想い」を叙情的に描いたこの曲によって彼女は、新しいボーカル表現を獲得できたのではないだろうか。特にサビのフレーズにおける、切なくも美しいファルセットにはどうしても心を揺さぶられてしまう。

その後も阿部真央は、新たな充実期を実感させるような楽曲を生み出している。「『貴方が好きな私』が わたしを殺していく」というフレーズが心に突き刺さる「貴方が好きな私」、仲のいい男の子の友達に対する切ない感情がじんわりと伝わってくる「boyfriend」、そして、ストレートなロックサウンドに乗せて、“自分を認めて、少しずつ前に進もう”というポジティブなメッセージを高らかに鳴らす最新シングル「Believe in yourself」。様々な葛藤やコンプレックスを抱えながらも、どこまでも自分に正直に、強いエモーションと豊かな音楽性を兼ね備えた楽曲を世に送り出してきた阿部真央。デビューから5年間の軌跡が詰まった『シングルコレクション19-24』は彼女にとって“最初の集大成”というべきアルバムだと思う。

10月10日には初の日本武道館公演を開催。また、10月25日公開予定の映画「小野寺の弟・小野寺の姉」(主演/向井理、片桐はいり)の主題歌「それぞれ歩き出そう」を担当するなど、既に新たなアクションを起こしている。どこまでも真摯に歌と向き合いながら彼女は、これからも数多くの名曲を生み出すことになるだろう。10周年を迎え、30代を目前にした阿部真央がどんなラブソングを聴かせてくれるのか、いまから楽しみでしょうがない。  文:森 朋之



8/20 ON SALE

SINGLE COLLECTION
『シングルコレクション19-24』
【初回限定盤】CD+DVD:PCCA-04076 \3,700+税
【通常盤】CD:PCCA-04077 \2,500+税

① 伝えたいこと
② I wanna see you
③ 貴方の恋人に
なりたいのです
④ いつの日も
⑤ ロンリー
⑥ 19歳の唄
⑦ モットー。
⑧ 光
⑨ 側にいて
⑩ 世界はまだ君を
知らない
⑪ 最後の私
⑫ 貴方が好きな私
⑬ boyfriend
⑭ Believe in yourself

★初回限定盤:DVD付き
・music clip
① ふりぃ
② 伝えたいこと
③ 貴方の恋人に
なりたいのです
④ いつの日も
⑤ ロンリー
⑥ 19歳の唄
⑦ モットー。
⑧ 側にいて
⑨ 世界はまだ君を知らない
⑩ 最後の私
⑪ 貴方が好きな私
⑫ Believe in yourself
⑬ always

・「シングルコレクション 19-24」マスタリングドキュメント
・「シングルコレクション 19-24」ジャケットメイキング
・「Believe in yourself」music clip メイキング
・「always」music clip メイキング

LIVE&EVENT

5th Anniversary 阿部真央らいぶ2014@日本武道館
10/10(金)東京 日本武道館

あべまにあ限定イベント2014@東京・大阪
10/11(土)東京 原宿クエストホール
11/29(土)東京 六本木ブルーシアター
11/30(日)大阪 サンケイホールブリーゼ

Spitz × VINTAGE ROCK std. presents「新木場サンセット 2014」
9/10(水)東京 新木場STUDIO COAST

阿部真央公式サイト

阿部真央の過去記事

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