『YOASOBI』ミューズクリップ(第1214号)特別インタビュー

2023年08月01日

※「MC」2023年6月25日発行(第1214号)『アイドル』リリース時の特集記事を再掲載しています。
 
 
──TVアニメ『【推しの子】』のオープニング主題歌である『アイドル』は、原作者のお一人である赤坂アカ先生による書き下ろし短編小説『45510』があった上で曲を作られていますが、こちらを読んだときの印象は?
 
Ayase「(『【推しの子】』の)一ファンとしても本当に興味深い内容でした。
この作品において、とても大事なことが書かれているんですよね。
『アイドル』は『【推しの子】』の主題歌ですが、YOASOBIの曲の原作は小説『45510』なので、これはもう、一番のインスピレーションのもととなっています」
 
ikura「小説『45510』は、アイが実際に自分のことをどう受け入れていて、みんなにどう思われていたかったのか……というところについて、第三者の目線からの“こんな一面があったのか”という部分を描いてくださっているんです。
原作コミックスを読んだ上で小説を読むと、立体的にアイを感じることができますし、この小説があるからこそ、『アイドル』が完成したんだなというのは、すごく感じましたね」
 
 
──YOASOBIが主題歌をやることになったからこそ、こうした小説が生まれ、そこから素晴らしい曲が生まれた。マンガ、アニメ、小説、曲と、いろんな角度から、いろんな作品に触れられるのが楽しい。
 
Ayase「そこがYOASOBIのおもしろいところで、間口が広いんだけれども、ひとつの核に集合していくような感じなんです。
YOASOBIならではの楽しみ方ができるんですよね」
 
 
──タイトルを『アイドル』とストレートにつけた理由というのは?
 
Ayase「これはもう、初期段階から決まっていました。
僕はもともと原作コミックスのファンで、オファーをいただく前から勝手にデモを作っていたんです。
この作品の曲というのではなく、この作品に刺激されて、作った曲というのが正しいかな。
クリエイターの人に多いと思うのですが、ものすごくおもしろい映画や小説に触れたときに、創作意欲が湧いて何かをアウトプットしたくなるんです。
僕の場合はミュージシャンだから、コミックスを読んだ刺激が残っている状態で、ワクワクしながら無邪気に作っていたものが、偶然、オファーをいただいたことで『アイドル』という曲になっていった。
主題歌ということで、改めて、アイという登場人物のことと、アイドル、芸能界という部分においてのことを書こうと思いました」
 
 
──ikuraさんはどのような意識でレコーディングに臨んだのでしょうか。
 
ikura「この曲に関しては、自分の殻を大きく破らないといけないなという覚悟を持って臨みました。
チームのみんなと話し合い、アイ、象徴的なアイドルになって歌うということに行き着いたんです。
ただ、私の中にアイドルとしての表現の手札がなくて、どういう声が理想的なのかがつかめなかったんです。
「自分のことを一番可愛い、世界で一番可愛いアイドルだと思って歌ってみて」と言ってもらったりしながら、いろいろ試行錯誤して今、みなさんが聴いてくださっている『アイドル』になりました」
 
 
──1サビのあとのラップパートは、原作小説のことを歌いつつ、女の子のちょっとダークな気持ちともシンクロするような。
 
Ayase「2番のラップのところは原作小説における、アイとともに活動してきたメンバーの憎しみでもあり、愛でもあるという、妄信的な感情を書いているので、結構ストレートだなとは思います。
でも言われてみれば、確かに学校でのアイドル的な女の子に対する嫉妬心っぽい感じもありますね」
 
ikura「歌い方で狂気が感じられる部分もあるので、女の子の裏側の感情が急に表に出てきた、みたいな印象ですよね」
 
 
──歌うにも、かなりエネルギーを消耗しそうです。
 
ikura「エネルギーは必要でしたが、何かを削ったというよりは、自分が新しいことをやることに対しての楽しさ、チャレンジする自分にワクワクするという感じでの放出だったと思います。
レコーディングも、「もっと可愛く!」「もっと!」って言われながら、「はい、頑張ります!」とテンションを上げて、とても楽しかったです(笑)」
 
 
──Billboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”で、YOASOBI「アイドル」が8週連続で総合首位を獲得、というニュースも。すごい快挙です。
 
Ayase「もうただただ、嬉しいという感情でいっぱいです。
作る上で、できるだけ多くの人に聴いて欲しいという思いでやっているのですが、まさか、こんなに聴いてもらえるなんてね。
自分たちの手を離れて、どんどん楽曲が育っていっている状況なので、ひたすらすごいなと驚いています」
 
 
──たくさんの人が歌ってみていますが、それも狙っていた?
 
Ayase「想像していませんでした(笑)。
もちろん、歌いたくなるような、リズミカルでいい曲になるだろうというのもありつつ、どちらかと言えば、ダンスをしたくなるような曲かなと思っていたので。
実際に、TikTokで踊ってくれている子もすごく多いので、どちらもとても嬉しいです」
 
ikura「私が最初に聴いたときは、自分が歌えるかというよりは、すごいカッコいい! という感情が強かったですね。
挑戦していくほうの楽しさのほうが大きかったです」
 
 
──英語詞バージョンも話題になっています。
 
ikura「最初に英語版のデモを聴いたときに、歌詞を目の前に置いていたんですが、気づいたら曲が終わっていて。
目でも追えないぐらいの速さでした(笑)。
なんとか練習して歌えるようになりましたが、今までの英語版の中でも、群を抜いて難しかったです。
でも、歌うことは大好きですし、(英語で歌うことも)とても楽しいです」
 
Ayase「いや、ikuraは本当によくがんばった(笑)。
僕は翻訳をやってくださっているKonnie Aokiさんを全面的に信頼していて、お任せしている状態なので。
ただ、今回はKonnieさんのほうから一箇所だけ、英訳についての相談があったんです。
サビでも特に大事な「完全なアイ」というところ、この「アイ」には登場人物のアイのことも、「愛」という意味も含まれている。そういう表現ができるのが、日本語の魅力ではあるのですが、この一語を英語でどう表現したらいいのかというところで、Konnieさんが悩まれていましたね。
いくつかパターンを挙げてもらいながら、そもそもこの「完全なアイ」というのは、どういう意味なのか!? 
といったところを掘り下げて、みんなから見た、完璧とされているアイ(愛)という意味が乗ると一番いい、ということで、お互いの解釈を一致させた状態で、“it’s your perfected Ai”という表現に辿り着いたんです。
本当に、『アイドル』の英語バージョンは、Konnieさんとikuraの努力の結晶でできているんです」
 
 
──最後に、お二人が最近“推しているモノ・コト”について教えてください。
 
Ayase「僕はもともとビール党だったんですが、最近、ウィスキーをめちゃくちゃ好きになりました。
ビールも、ほとんど飲まなくなったくらい。
これは個人的にはすごい革命なんです。
一番好きな銘柄は、ラフロイグ18年です」
 
ikura「私は花瓶集めかな。
実際にお店で買ったり、ネットで注文したりしているんですけど、散歩に出かけるときにお花屋さんを探して、そのときの出会いで4本ぐらいお花を買って、帰って花瓶に生けることが心の潤いに繋がっています」
 
Ayase「僕も家具やインテリアが好きで花のサブスクをやっていたこともあるんだけど、花瓶は集めだすと止まらないよ。
今も家に20個ぐらいあって、手入れが結構、大変だから。
あんまり増やしすぎないほうがいいかも(笑)」
 
ikura「少数を愛してあげるほうがいいんですね。
わかりました!」

 
 

 

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