音楽家の冨田勲さんが、新作の創作活動のなか亡くなる

2016年05月08日

  作曲家・編曲家であり、シンセサイザー奏者でもある冨田勲(とみたいさお)さんが5月5日に慢性心不全のため都内の病院で亡くなった、享年84歳だった。

 冨田さんは、1932年東京生まれ。慶応義塾大学在学中から平尾貴四男、小船幸次郎各氏に作曲を師事。在学中よりNHKの音楽番組の仕事を始める。
 日本コロムビアで作曲家としてのキャリアをスタートさせ、大河ドラマや手塚治虫アニメの音楽などを多数手がけた。1970年代からは、シンセサイザーをいち早く導入し、「月の光」や「惑星」など数々の野心的なアルバムを発表。日本人で初めて米グラミー賞にノミネートされるなど、世界的な評価を受けた。近年では、2012年にバーチャル・シンガーの初音ミクをソリストに組み込んだ「イーハトーヴ交響曲」を発表し、国内外で上演を重ねて話題となった。また、今年11月に上演予定の新作「ドクター・コッペリウス」の創作活動を亡くなるの直前まで行っていたようだ。
 冨田さんを世界のTOMITAに押し上げたのは、1970年頃より着手したシンセサイザーによる作編曲・演奏だ。1974年には米RCAよりリリースされたアルバム「月の光」が米ビルボード・クラシカル・チャート第1位となり、日本人として初めてグラミー賞4部門にノミネートされ、さらに全米レコード販売者協会(NARM)の1974年度クラシック部門最優秀レコードに選出されるという快挙をなしとげ、その後ヨーロッパなどにも活動の場を広げ、各地で壮大なイベントを幾度となく成功させた。
 そして、これからのTOMITAワールドは、長男の冨田勝氏(慶応義塾大学教授)のメッセージにも現れていた。
「いままで父の音楽を愛してくださったすべての方々に厚く御礼申し上げます。
〔中略〕
 勲は、小さな子供が大好きです。多くの孫、ひ孫に囲まれつい先日大家族で誕生会を祝ったばかりでした。
 これからも父の作品と志は、亡くなることはありません。富田勲をどうぞよろしくお願い致します。」
 このメッセージが発表された8日、富田勲オフィシャル・フェイスブックはこれまでと同じように更新されていた。
 

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